信仰の足跡

普段意識して見ることは少ないが、道路の脇や分かれ道に法界石や石灯籠、地蔵さんを目にすることがしばしばある。これはその街道がお寺に通じる参道であったり、そこが信仰の謂れのある場所であったりする。こうした古くからの“信仰の足跡”は地域ごとに守られ、今なお保存されているケースが多い。

先日、井原市の県道102号線(大江町)で、法界石が2基並んで建っているのを見かけた。中央には南無妙法蓮華経の立派なお題目が刻まれ、それぞれ建立された年号が残っていた。 「嘉永三(1850)年十月日 為、平等利益」 

「天明元(1781)年十月日 奉唱題目壹千部」 この地域が昔、法華信仰の盛んな地域であった証であり、それを今に伝える歴史的石造物である。
ふと自分の身の周りに目を向けると、小さいながらに色んな発見がある。それはその人に気付いてもらいたくて、メッセージを投げかけていることもあるのではなかろうか。おそらく、この法界石は私を通じて多くの人にその存在を知ってもらいたかったのだと思う。人々が手を合わせる物や場所には、不思議な力が宿っているものである。