枕経にて

先日、とある檀家の方が亡くなられて「枕経」にお伺いした時のことである。故人のお孫さんの何げない仕草に、とても驚かされた。病院からご遺体が自宅に帰って来たのが午前2時頃、遺族も集まっており懇ろにお経をあげさせていただいた。その中に、小学1年生くらいの男の子の姿があった。お経中は眠いながらも同席し、ちゃんと手を合わせて共に読経してくれていた。お経が終わり、今後の打合せを遺族と話していると、お孫さんがご遺体のすぐ側に置いてあった線香に火をつけ、さり気なく立てていたのだ。誰が言ったわけでもなく、自分の意思で…
私は当家の信仰がしっかりとお孫さんにも受け継がれていることを目の当たりにし、とても嬉しく思った。今でこそ祖父母と同居している家族は少ないが、祖父母の行いは、自然に子や孫に受け継がれているものである。祖父母が毎日仏壇に線香を供え手を合わせていれば、子も孫もその姿が日常当たり前の姿となり、自分達も自然にそうするようになる。これが、“もの言わぬ信仰の相続”と言えよう。子は親の真似をし、親はその親の真似をして育ってきている。親が善行を行えば、それは自然に子や孫にも受け継がれていくわけである。
そんなお孫さんの姿を見ながら、故人はきっと喜んでおられたことであろう…
線香のお供えも、親から子への大切な教えとなります。