75年前の16mmフィルム

当山の山門と石段、法界塔が映っています。葬具を先頭に、大勢の人が歩いてお参りしています。
今月中旬、立正大学・日蓮教学研修所(日教研)から一枚のDVDが届いた。今から75年前に当山で営まれた、S家の葬儀の様子を納めた16mmフィルムの複製版である。この映像は約6年という年月をかけて当山に“還って”きたが、様々な偶然と因縁が重なっているように思える。
事の始まりは平成14年、日教研より一本の電話がかかってくる。東京在住のS姓を名乗る女性が同研究所に、自分の持っている16mmフィルムを寄贈したいとのことで、「貴山に該当される檀家がおられますか。」との問い合わせであった。檀家にS家はおられるものの東京には該当者がおらず、そこでいったん話は終わってしまう。ところが昨年、関西在住の檀家のS家から「福山の旧宅を処分するので、お寺で使える物があったら寄進したい。」と連絡を頂いた。この事がきっかけとなり、数年前に日教研から問い合わせがあったS家のフィルムの事を思い出し、連絡を取ることになった。後日、当時の担当者から電話を頂き、「後任の者にフィルムをダビングして、お送りさせます。」との返事を頂いた。そして、いよいよ手元に届くことになる。
霊柩車を先頭に、列をなして火葬場へ。異国の様子を漂わせる、フェリーの映像。
DVDには、75年前のS家の葬儀の様子が鮮明に映し出されていた。時代を感じさせるのは、葬具と共に紋付袴の男性や日本髪を結った女性が、多数行進して当山に参列したり、火葬場に移動する時には今でこそクラシックカーと言われるような車が登場したり、また海外でフェーリーや飛行機に乗った映像や、観光地を訪ねるような映像も残っていた。時代を考えると、当時のS家の財力がよく伝わってくる。
今回、75年前の当山の様子を伺い知ることが出来、とても嬉しく思った。ちょうど先月から始まった、七面堂改修工事にて発見された棟札は、フィルムが撮影された昭和8年に書かれたものである。また、日教研の担当者が大学時代の同窓生であることも単なる偶然とは思いがたい。境内にて真っ赤に色を染めたS家寄進の紅葉の木が、「時代を超えて何かを語りかけている…」そんな気がした。
飛行場の様子も、映されていました。S家ご寄進の紅葉が、とても綺麗に色づいています。

75年前の16mmフィルム” に対して1件のコメントがあります。

  1. k.s より:

    この度、S家の末裔としてこの記録、DVDを非常に興味を持って拝見しました。75年後に私の目に映ったこの光景は奇跡といえる御縁とつくづく感じています。お送りいただいた副住職様に感謝申し上げます。

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