お寺での葬式

お寺での法要では、皆さんでお経を捧げます。本堂からの出棺では、鐘楼を鳴らしてお送りします。
過日、檀家の『お葬式』を当山で営んだ。
お寺での「お葬式」は、あまり一般的でないように思われがちだが、檀家がお寺を利用する事はごく自然なことである。
檀家とは、云わばお寺の“会員”であり、海外寺院では実際に檀家を“メンバー”と呼んでいる。会員達が自分の属する施設を有効利用するのは、ごく自然なことと言えよう。檀家がお寺で仏事を行い、ご本尊様に手を合わせ、親族や寺族と会話し、そしていつもと違う雰囲気の中で“特別”な時間を過ごす。メンバーシップならでは出来えることであろう…
今回亡くなられたH氏は長年当山の世話方も務めて下さり、平素から懇意にお付き合いして下さった。毎回、法要後の御斎(おとき)では、笑いながら休む間もなく、お酌して下さったことが記憶に残る。そんな故人も生前に「自分に何かあったときはお寺で葬式をして欲しい」と言っておられた。
お寺で「葬式」を営む場合は、準備するものが必要最低限で済む。棺、遺影、生花…勿論、葬祭業者の協力も必要ではある。今回お手伝い頂いた葬祭業者は非常に理解があり、こちらの要望にいやな顔ひとつせずに準備を進めてくださった。
『葬式』は、身内を亡くされた遺族が悲しみのなか、慣れない事に不安を抱き、心身共に疲れながらも進めなくてはならない“過酷な儀式”と言えよう。そんな遺族に対し、“儀式の執行者”として専門的な助言を施し、不安や疲労を軽減させ、最後の別れを心に残る儀式とする為にも、寺院で営む「葬式」の必要性は高い。
今回の「葬式」でも、会葬者の方々にお経本をお配りし、皆でお経をお唱えし、故人を偲びながら、“最後のお別れ”をすることが出来た。
共にお経を捧げて下さった会葬者に感謝し、故人のご冥福を心からお祈り申し上げたい。