事実が伝えるもの

かねて観賞したいと思っていた映画を観に行くことが出来た。「明日への遺言」である。第二次世界大戦後、戦犯裁判にかけられた岡田資(おかだたすく)中将の法廷闘争を描いたノンフィクション作品である。主役となる東海軍司令官の岡田中将は、仏教信仰を心の糧とし、米軍から追及された戦争責任を一人で負おうとし、また戦争が敵味方関係なく人々にもたらす悲劇を身をもって伝えようとしていた。戦犯裁判にかけられた者の中には、責任逃避のために他人を陥れたり、嘘の証言をした者も多数いたようである。そんな中、全ての責任を自らのものとし、部下を救うべく、法廷にて自分の信念を貫き通した岡田中将の姿に、涙があふれた。
自身は仏教の教えを深く信じ、人を殺めた現実に苦しむ兵士や、戦犯にて極刑が確定した若手兵士等に心の安定を与えるため、法華経を読んだり、座禅を組んだりと、さながら僧侶のような振る舞いをしている。
戦争は、憎しみや悲しみや怒りを生むだけで、何の解決にも成りえない。戦争の悲惨さだけでなく、我々が心に平和を保つことの必要性、また、人間として善悪の判別を見極める事の重要性を説く映画であった。
人種や性別、そして立場に関係なく“人として守らなくてはならないものは何か…”を我々は確認しなくてはならない。
花のように、美しい心を持ちたいですね。