自然へ帰す

さあ、好きな所へ飛んで行きなさい!
先日、息子が飼っていたカブトムシのつがいを、本堂裏の林に逃がしてやった。成虫をもらって飼い始め、霧吹きで水をかけたり餌をやったりと、意外によく世話をしていた。子どもが大好きなカブトムシ、その立派な角と黒褐色の胴体は、昆虫の王様たる雰囲気をかもし出していた。
私もちょうど息子と同じ年の頃に、近くの山によくカブトムシの幼虫を探しに出かけたものだ。朽ちた木の近くを掘ると、そこからわんさか幼虫が出てきた記憶がある。また夏には、セミを虫かご一杯になるまでよく採ったものだ。特にミンミンゼミが逃げ足が早く、捕まえた時には、緑がかった綺麗な胴体を見てとても喜んだものである。家に持ち帰り、母に虫かご一杯のセミを見せると、驚きながらも微笑んでいた…
我家にはある「決めごと」があった。“セミなどの虫を採ってきたら、必ず次に日には逃がしてあげること。お盆の期間には虫を捕まえないこと。”
セミは成虫になるまで何年も土の中で過ごし、成虫になったら、たった一週間しか生きれないという話を聞かされ、子どもながらに衝撃を受けた記憶がある。
昆虫や動物などの生き物を飼えば、とても多くのことを学べるのは事実であろう。ただ昆虫など限られた日数しか生きれないものは、時が来れば自然に帰してあげたいものだ。狭い箱の中では本当の自由を味わえないのだから…