物を造る

補修された新幹線高架の様子です。
先日、棚経で移動中に新幹線の高架側を通ることがあった。その高架の支柱は、何重も鉄線のような物が巻かれ、補修されていた。昭和50年3月10日、岡山~博多間で山陽新幹線は開業された。時代は高度経済成長の真っ只中、コンクリートの材料に使う砂が各地で不足し、代わりに海砂を使用したらしい。海砂は塩分を充分に洗浄していれば問題ないが、この時代、洗浄は一般的ではなかったようだ。そうして造られた新幹線の高架は30年を少し過ぎた現在、過剰に含まれた塩分による劣化の被害を受けている。
当山に現存する寛文六(1666)年の本堂棟板には、由縁をはじめ棟上の年月日、施主、大工棟梁の名が書き連ねてある。本堂棟板だけでなく、鐘楼堂の棟板、仏像、仏具に至るまで製作者の名前を見ることが出来る。そこからは「私が責任を持って造りました」、という心意気が感じられる… 物を造るにあたっては施主の気持ちを汲み取り、施工者がよい仕事をするよう心がけなくてはならないと思う。そうして出来上がった物は、現に何百年と言う時代を超えて現在に形をとどめている。“よい物を造り後世に伝える”日本が誇れる職人気質を大切にしたいものである。