還るべき場所へ

歴代上人が代々使われていたであろう御経本、『妙法蓮華経八巻品』
先般、ある檀家のお宅へ「仏壇閉眼供養」にお伺いした時の事である。閉眼供養も無事終わり、古くなった御札や仏像をお寺に持ち帰って頂きたいと、施主が仏壇を再度確認したところ、引き出しの奥から「掛け軸」「御経本」が出てきた。「掛け軸」は昭和初期に書かれた「御本尊」であった。また「御経本」は、表紙に“實相寺”と書かれた随分古そうな「妙法蓮華経八巻品」の第一巻であった。この「御経本」、当寺で保管している八巻品のうちの一巻であることがすぐ分かった。以前から数巻が見当たらず、どこに行ったか探していたものである。どのような事情で檀家の家に保管されていたかは分からないが、施主も「お寺の物であるなら」と、恐縮しながらお返しして下さった。“お寺にあるべき物が、お寺に返って来る”これほど喜ばしいことがあるだろうか。以前にも什物や資料が、ご縁を頂き返ってきたことがある。
本来、お寺の『什物』が、門外に出ることはあり得ない話である。開山上人から何十代もの歴代住職が、後世に護り伝えてきた『什物』には、数えきれない程の“御経”と目に見えない“想い”が籠められているものだ。今回の『什物』発見も歴代上人の“想い”が、きっと形に顕れた結果であろう…
お寺とは「御経」の声が響く場所、また『信』の力により不思議な体験が出来る場所でもある。今後も沢山、不思議な出来事と廻りあえる気がしてならない。