供出された『梵鐘』

戦争で供出した当山の『梵鐘』『梵鐘』の他に、沢山の仏具も供出されました。
先日、檀家のSさんが大変貴重な写真を持ってきて下さった。仏壇を整理していて出てきたという古い写真である。そこには『梵鐘 大東亜戦争応召 日蓮宗實相寺』と白布に書かれた梵鐘と仏具が写っていた。梵鐘には「當山第十九世日堪」という文字も刻まれており、当山の梵鐘であることが確認できる。
戦争にて金属が不足し、“お国のため”にと供出されたのであろう…
いつの時代も「戦争」はあらゆるものを犠牲にしてしまう。
仏具が供出され、戦場で使われる武器等の材料となることも実に理不尽である。
お寺はそもそも“法を説く道場”であり、争いのない平和な世界を理想としている。また仏具は、檀信徒が心をこめて寄進してくれた云わば“お寺の宝”でもある。平和を願うお寺の仏具が、人を傷つけたり、殺めたりする為の武器となるとは、実に皮肉なことだ。
『梵鐘』とは法を説くお寺の場所を、十方の人々に知らしめる為の仏具でもある。今でこそ梵鐘を打てるお寺が少なくなったが、誰でも自由に鐘をつき、その鐘の音で心を“浄化”して頂ければ、梵鐘もきっと喜ぶはずである。