故人がくれた“ご縁”

過日、当山檀徒の六七日忌のお経にお伺いさせていただいた。五月に亡くなられてから、初七日忌から七日ごとの忌日に御回向をさせていただいている。故人とはお盆の棚経や法事でお会いしていたが、いつも自宅にお伺いすると黒いワンちゃんが一緒にお迎えしてくれたのが特に印象に残っている。亡くなられたのはちょうど私が東京へ出張していた時で、本来なら葬儀に戻れないところ、友引をはさんで葬儀が一日ずれたので出座する事が出来た。また七日ごとの忌日のお経も、当初は予定に無かったが急遽、当家の要望にて決定したのである。私は、葬儀も七日経も故人の願いが伝わってきたように感じた。初七日忌から四十九日忌まで七回仏事を行う「ご縁」を頂き、お集まり下さった当家の方にも、心に残る供養を努めさせていただいた。法事とは僧侶だけがするのもでなく、故人に関わる人が一緒になって供養を捧げるものだと私は思う。故人のことを思い、共にお経を捧げ、そして冥福を祈る。ごく自然な事ではあるが、なかなか出来ないのが今の世の中である。
“生”を受ければ必ず“死”を迎える。早かれ遅かれ“死”は必ず訪れるのだ。故人が結んでくれた「ご縁」を大切に、供養を捧げ、仏事に関する多くのことに触れて頂ければ、故人もきっと喜んでくれるはずである。