木鉦の響き
日蓮宗では読経のときに「木鉦(もくしょう)」という仏具を広く用いている。「木魚(もくぎょ)」といえば分かりやすいかもしれないが、お経の調子をとるときに使う“鳴り物”である。木魚は低音でポクポクというイメージだが、木鉦はカンカンと高音で、早く叩くときに適した鳴り物といえよう。特に読誦会や祈祷会等でお経を何巻もあげる時には読経も自ずと早くなり、木鉦も調子をとる為に急調で打たれる訳である。その叩き方も何種類かあり、平素の葬儀や仏事で打は「雨だれ」と言って、ゆっくり等間隔で打つ。読誦会や祈祷会では、沢山のお経を読むため調子も早くなり、「中拍子」「本拍子」と言って特殊な叩き方で打たれるようになる…
私は大荒行に初めて入行した時の、“全堂木鉦師”を務めたW上人から木鉦の打ち方をご指導頂いた。その木鉦の響きは、いまだに忘れることが出来ない。全堂木鉦師とは、150名以上の僧侶が急調で勤読する時に、皆が乱れず読経するために木鉦にて調子を整える“読経の番人”と言える役目である。
先日、市内某寺の副住職が読経の練習に当寺を訪れた。本年、大荒行に入行される予定らしい。読経も木鉦も、日々の積み重ねが形に表れてくるものだと私は思う。日々の精進にて、自らの“響き”が身につけれるよう、頑張ってもらいたい。