畳干し

本堂の前に干された畳。天日に当たって気持ち良さそうです。仕上げは叩いて埃を払います。本堂だけでも70畳はあります。
清々しい秋空のもと、本堂の前に沢山の畳が並べて干されている。昔はよく見慣れた光景のようであるが、今では珍しい。今年の夏は、特に雨の日が多く気温が高かったこともあり、畳もかなりダメージを受けたようだ。
当山には“心ある方”が、よく手伝いに来てくださる。Aさんもそんな中の御一人である。このAさん、宗旨こそ違えど菩提寺では役員をされておられる信仰家で、度々当寺にもお手伝いに来て下さる。まさに佛を絵に描いたような方である。そう言えばどことなく大黒様に似ておられるようだ…
そんなAさんと、「お寺のお役に立ちたい」と退職後に当山に通うようになった義父の二人で、畳干しをして下さった。
一回に干せる量は30畳程であろうか、数日に分けて本堂と庫裡、客殿を含め100枚以上の畳を二人で干して下さった。
最近の畳は幾分軽くなったといえ、枚数が枚数である。お二人とも汗だくになっての作業である。まず、畳を上げて外に運び、上手に立てかけて干し、次に床板をはがして換気・乾燥をさせ、床下の掃き掃除、それから畳を叩いて埃を払い、床板と畳を敷きつめ、終わって掃除機をかける。
若い者でもきつかろう作業を、二人で黙々とこなされる。何とも有り難いお姿である。終わる頃には日も落ちて、正直クタクタであろう…
“徳を積む”とはこういうことであろう。見返りを求めず、奉仕の心で事に当たる。なかなか出来そうで出来ることではない。当山には、そんな“徳を積まれる方”が大勢おられ、本当に助かっている。
いつの世も、「目に見えない力やご縁」によって、お寺は支えられてきたのではなかろうか。そんな人々の気持ちにも応えるべく、お寺は誰でも温かく迎えいれてくれる“癒しの場所”でなくてはならない。