鶴は千年、亀は万年

春になると植物は芽吹き、昆虫や動物達も動き始める。
冷たかった池の水も温かくなり、9匹の鯉も活発に動きだした。
実はこの鯉、檀家の方が寺に寄贈して下さったものだ。
鯉と同時に8匹の亀もやって来たが、今は1匹もいない。
亀はゆっくり動くように見えて、実は意外に動きが素早い。また、池の枠石をよじ登るという器用さも持っている。あれこれ工夫してみたが全て脱出してしまったのだ。時には運よく見つけて帰ってきたこともあるが、亀のほうが一枚上手のようである。
当山七面堂の下に小さな池があるが、先日「亀がひっくり返っている」と息子が教えてくれた。慌てて見に行くと、干からびてピクリとも動かない亀がいた。移動中に斜面から転がり落ちたようで、ひっくり返ったまま、息絶えたのであろう。この亀は一番の大亀であるが、一番新入りでもあった。まさかこんな形で見つかるとは思わなかった。この日は雨が降っていたので「雨が上がったら埋めてあげよう」と息子と話をし、ひっくり返った亀を裏返し、元に戻してあげた。何故かお腹の甲羅が綺麗で印象に残った。
後日、雨が上がったので埋めてあげようと七面堂に見に行くと、亀がいないではないか。あたりを探したが気配もない。勿論、容易く人が入れる場所ではないし、家族の者以外は誰も知らないはずだ…
どうしたのか気になったが、なぞが解けた。亀はよく甲羅干しをするが、一見干からびたような状態になることがある。以前、別の亀が池で甲羅干しをしたとき、私が死んでしまったと勘違いするほど干からびていたが、数時間後には元気に泳いでいた記憶がある。
今回の亀も自分の命を危機から救う為に、高等な技を使ったのであろう。動物の本能は実に素晴らしい。「鶴は千年、亀は万年」とはよく言ったものだが、長生きの秘訣を垣間見たような気がした。流石である。
私も亀の教訓を活かし、「亀の甲より年の功」となり、何かのお役に立たなければと思った。

鶴は千年、亀は万年” に対して1件のコメントがあります。

  1. どらごん より:

    今日は息子に対して心温まる御心を頂戴し、本当にありがとうございました。何よりも嬉しく思いました。

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